
ふぅ~。

どうしたんですか、涼子さん。

主人の給与明細をみて、つくづく思うんだけど、 ひかれる税金が多いなぁって。


税金ってうまい具合に徴収されるシステムですよね。

自動的にひかれるのが悔しいし、

とられる割りにはメリットをあまり感じない?

そうよ。そうなのよ。

そうですよね。そう考えると、働きたくなくなりますよね。 ふぅ~。

な…夏美ちゃん(後ろに所長…)

うわぁ~、所長、お疲れ様です!キリッ
(やる気のない所員と思われないようにしなきゃ。)

所長、こんにちは!
この前、お伺いしたギリシャの脱税のお話、 とても面白かったです!
税金って最近のシステムかと思ったけど、 古くからあったのですね。

そうなんですよね。面白かったようで、よかったです。

この前は古代ギリシャのお話でしたが、 別の時代は税金事情はどうだったのでしょうか?

そうですね。 優れた税金システムがあったと言われる古代エジプトについてお話 ししましょうかね。

是非よろしくお願いします!

働きたくなくなった夏美ちゃんの気分転換も兼ねてお話ししましょ う。

うへ~。バレてる。

ふふふ。

古代エジプトの税金の特徴は「中央集権制度」と「 直接的な税の徴収」です。
古代ギリシャとは違い、 古代エジプトは民からの直接税が主要な財源となってました。

時代によって違うんですね。

そうなんです。エジプトでは国土はファラオ(王) の所有物であり、民はそれを借りて耕作しています。そのため、 民は貸借料として税金を支払わなければならない、 という考え方です。


古代ギリシャとはまた違ったシステムですね。

はい。古代エジプトは中央集権的な国家システムでした。
国の力を一つにまとめると、当然、国力は上がります。 そうすると何ができると思いますか。

う~ん。力やお金が集まるってことだから…

そうなると、 大きな公共事業や安全保障に繋がる事業が行いやすくなりますね。

夏美ちゃん、やる気がでてきたかな。
そうです。 潤沢な資金があれば国をさらに豊かにすることができます。
また、エジプトの王達は巨大なピラミッドを作り、 そこにたくさんの金銀財宝を溜め込むことができたのも、 この中央集権国家の特徴なのです。


なるほど。

ピラミッド=金銀財宝ってイメージありますからね。

当時の税金はどのように決めていたかわかりますか。

う~ん。民が耕作したものにかけられていた直接税だから.. .
もちろんお金ではなく、農産物かな。

そうですね。古代エジプトでは「書記(セシュ)」 といわれる下級官僚たちが徴税業務を担っていました。
農作物には20%の収穫税が課せられ、 書記はこの難しい計算をこなしていました。


当時の書記の方はとても優秀だったのですね。

そうですね。そして、書記は今でいう公務員です。

今では税に関わる仕事をするのは公務員というのは当たり前ですが 、当時ではとても珍しいことだったんですよね。

そうです。書記は国から仕事として税を徴収してました。 この制度を維持することはとても大変なことだったのです。

なぜですか。

税の徴収に携わるということは、 賄賂といった誘惑も多いからです。

いわゆる「袖のした」ってやつですね。

そうですね。例えば決められた額よりも多く徴収し、 私腹を肥やすといった誘惑もあります。 そうならない為に国を治めるファラオ(王)達は、 徴税人が悪代官にならないように書記に対して、 様々な慈悲の心を以て職務にあたるように常々命じていました。

命じるだけではなく、 監視や監督といったものはなかったのですか。

ありましたよ。罰や追放といった記録があります。
この書記のお陰で古代エジプトは効率的な徴税が行われていました 。

そうなんですね。 古代の人々も色々と工夫をしていたのですね。
とても興味深いです!

でも良い時代が永遠に続くわけではないのです。 栄枯盛衰という言葉があるように、 栄えた国でも衰えがみえ始めてきます。

というと、 徴税人である書記が私腹を肥やすようになってきたのですか。

そうなんです。古代エジプトの後半(紀元前1300年頃) にはファラオ(王)の目を盗んで徴税人は余計な税を取り始め、 私腹を肥やすようになってきました。
その結果、国は傾いていきます。

「官僚が腐敗し、税収が減少、そのため更なる増税、 その結果、民が疲弊する」ってことですね。

はい。その悪循環が国家崩壊につながってきます。 そしてそのときに民の救いになるのが…

宗教ですね。

そうですね。
古代エジプトには「神殿(アメン神殿)」 という強力な宗教団体がありました。
神殿の土地や収穫物には税金がかかりません。そのため、 税金が払えなくなった民が神殿に避難してきた場合、 徴税人からの追求から逃れることができたのです。


これも一種の脱税?みたいですね。

そういったケースもあったでしょうね。
では今日はこの辺りで終わりにしましょう。

はい。所長、ありがとうございました!